先立つ恵み

《 ルカによる福音書 2章41~52節 》
 ルカによる福音書には、イエス・キリストの子ども時代の様子が短く記されています。主イエスは、おおよそ30歳になられてから公に活動を開始されましたが(3:23)、神様の働きかけは、その時を待たずに、先立って注がれていたことが伝えられています。
 特に、次の言葉に注目してみたいと思います。「知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛された」(52節)。ここでは日本語の訳として分かりやすく訳してありますが、元の文では、知恵、背丈、そして神と人からの恵みも、「前進していた」と書かれています。前進するということですから、これから先も、進み行くという勢いのある言葉です。また、この前進するという言葉には、元々切り開いて進むという意味があります。
 福音書の話の流れでは、それ以後は大人になったイエス・キリストの話が始まりますので、今後に向かって、上からの力により、あらゆる面で、「切り開くようにして前進されていた」という意味が、ここに込められていように思います。
 このことは、今日の私たちの現状からすると、なお励ましの内容として受け止めることができるのではないでしょうか。私たちの迎えた新しい年の始まりは、このコロナの状況というものが、何か私たちの行く手を遮るかのようにも思える状況にあります。しかし、イエス・キリストにおいては先立つ恵みがあり、そしてそれによって、なお、主イエスは、道を切り開いて進んで行かれるという様子を心に留めたいと思います。
 教会では、主の年2021年と言います。〝主の年〟と言う時、私たちは、それが、人間の営みによる年ではなく、主ご自身が進み、また私たちに与えてくださる年であることを心に留めたいと思います。また、そのつどに、歩みの中で思い起こすことができますように。新しく迎えたこの年を、導かれるお方がおられることに信頼を置き、共に歩みたいと思います。
(2021年1月3日 新年礼拝説教要旨)